前回(猿手の探索 レポート1 原猿~真猿の場合)に続き、真猿~類人猿における猿手の検証をします。真猿は原猿に比べて、「よりサルらしいサル」ということのようですが、マントヒヒやニホンザルが該当します。真猿は秩序だった群れを作ることもよく知られており、ニホンザルが作る群れのイメージは皆さんにもおありかと思います。
さっそく見ていくと、ニホンザルに近いアカゲザルの群れがいました(図2-1-1)。アカゲサルが四足歩行で歩くときには、手は背屈という手を反らして掌を地につけた状態で歩きます(ヒトでも四つ這いのときはそのようにします)。このアカゲザルが土の上に落ちている食べ物を探すときには手を反らしたまま、地面をなでるようにして落ちている食べ物を探しておりました(図2-1-2)。実が落ちていたら摘まみ上げるところが見られるのにと思い、観察を続けておりましたが、残念な事に摘まみ上げの動作を見ることはできませんでした。
次にもう少しヒトに近いテナガザルの観察をしてみました。どこにいるのかな?と覗いてみると、いきなり木の上からニョキッと手が差し出されます(図2-2-1)。手が長いだけでなく、指も長いのがわかります。指が長いのは木にぶら下がるのには有効ですが、母指球はそれほど発達していないことから「摘まみ」はあまり得意ではなさそうです。しかし木にぶら下がりながら木の葉を摘まんでいるのを見ると、親指と他の指の先をあわせる「摘まみ」が可能なのが観察できます(図2-2-2)。その後、器用に葉を枝から摘み取って口へと運んでおりました。
この日はぽかぽかと暖かい日だったので、猿山とおぼしき所にはたくさんのアカゲザルが日向ぼっこをしながら毛繕いをしておりました(図2-3-1)。この時は親指と他の指の先を合わせる「摘まみ」をしながら毛についているゴミ?を取っておりました。これらはグルーミングと呼ばれ、単に毛繕いだけではなく、あたかもジェスチャーのように見えます。(図2-3-1)。これらを見るとコミュニケーションの手段として手をうまく活用しているように思えました。
本日のレポート結果
よりヒトに近いアカゲサルとテナガサルは「摘まみ」動作が可能である。しかし木の上で生活をするテナガザルと高度な群れを構成するアカゲザルでは違う手の進化を遂げている可能性がある。